作業見積もりを行うことの 6 つのメリット
- Masha Ostroumova, Enterprise Agile Coach
- 2023年11月17日
- 読了時間: 5分

アジャイルでの見積もりの重要性について、以前の記事では時間ベースの見積もりが機能しない理由(「時間ベースの見積もりが機能しない6つの理由」)や、ストーリーポイントの有用性(「ストーリーポイントの解明:今日から使うべき5つの理由」)、そしてチームでの導入方法(「ストーリーポイント101:始め方のガイド」)を解説しました。
今回は、なぜそもそも見積もりに注力するべきなのか、そしてどのようにチームを見積もりに適応させるかについて掘り下げていきます。アジャイルにおける見積もりの利点を探る旅に出ましょう。
重要な議論を引き起こす
見積もりは単にタスクに値を割り当てるだけではなく、チーム内での重要な議論を促進する役割を果たします。見積もり作業を通じて、タスクの範囲、実装戦略、全体的な実現可能性について自然と議論が生まれます。この協力的なアプローチにより、チーム全員が同じ認識を持ち、洞察を共有し、タスクに対する理解を深めます。
特に投票方式を用いることで、メンバー全員が意見を表明しやすくなり、先輩後輩に関係なく発言の場が平等に与えられます。これにより、議論が豊かになり、見積もりの精度が向上するだけでなく、チームの結束力も高まり、共通の目的意識が生まれます。
サイロ化の解消
チームメンバーがそれぞれのタスクに没頭し、互いに孤立して作業している場合、チーム全体の成功が妨げられます。見積もり作業は、このようなサイロ化を解消し、協力的な環境を醸成する強力なツールです。
見積もりの際には、個別のタスクに取り組んでいる場合でも、メンバー間での情報共有や質問のやり取りが奨励されます。当初はぎこちなく感じるかもしれませんが、これによりメンバーはお互いの作業内容を深く理解し合うようになります。このような理解とコミュニケーションは、建設的なフィードバックや洞察の共有、助け合いを促進し、チームがより協力的で成功に向けた道を歩むための第一歩を築きます。
リソースの割り当てを導く
アジャイルでは、すべてのメンバーが常に忙しくなることを目的とせず、顧客やビジネスにとって最大の成果を生み出すことに注力します。見積もりを行わない場合、実際の作業負荷を理解せずにスケジュールが過剰に詰め込まれることがよくあります。
見積もりは完璧さを求めるものではなく、作業量の大まかな理解を得るためのものです。これにより、過度に楽観的な計画を防ぎ、タスクが現実的な範囲内で整理されます。このプロセスを通じて、リソースがより戦略的に割り当てられ、チームの努力が効率的に活用されるようになります。
優先順位付けの強化
アジャイルでは、優先順位付けが重要であり、その方法には多くのフレームワークがあります(詳細は以前の記事「アジャイルの優先順位付けマスター:トップ4テクニックを学ぶ!」で解説しています)。多くの優先順位付けフレームワークは、顧客やビジネスにもたらされる価値と、タスクを完了するために必要な労力という、いくつかの重要な基準に依存しています。
たとえば、顧客に同じ価値を提供する2つのタスクがあった場合、1つは少ない労力で完了でき、もう1つはその3倍の労力を要する場合、どちらを先に取り組むべきでしょうか?見積もり作業を通じて、迅速に価値を提供し、フィードバックを早く得るために、小さなタスクから始める選択が促されます。
チームのベロシティを理解し、計画を改善する
アジャイルにおけるチームのベロシティとは、チームが一定期間内(通常は1スプリント)に完了できる作業量の指標であり、主にストーリーポイントで表されます。これにより、チームがプロジェクトの進行状況を予測し、計画を立てるのに役立ちます。
ベロシティは、従来のプロジェクト管理で使用される「工数」とは異なります。たとえば、5人のチームが週200時間の作業時間を持つと計算する代わりに、アジャイルでは「1スプリントで20ストーリーポイントを完了できる」といった具合に表します。
ただし、ベロシティを利用する際には注意が必要です。数字を無理に押し上げようとすると逆効果になります。例えば、見積もりを実際以上に膨らませて(5ポイントの作業を20ポイントと評価するなど)ベロシティを高く見せかけても、実際の進捗や生産性には寄与しません。
また、異なるチームのベロシティを比較することも避けるべきです。各チームのベロシティは、そのチーム独自の見積もり手法や基準によるものであり、他のチームと比較する指標として適していません。ベロシティは、主にチーム自身が計画や進捗を評価するための内部ツールとして活用すべきです。
依存関係を効果的に管理する
依存関係の管理は、優先順位付けやリソース管理と密接に関連するプロジェクト計画の重要な要素です。特に、他のチームや外部ベンダーとの連携が必要な場合、ある程度の見積もりがあることでスムーズな納期管理やブロッケージ防止に役立ちます。
見積もりは、ロードマップやタイムライン、マイルストーンなど、他の計画ツールと組み合わせることで効果を発揮します。ただし、過度に詳細なスケジュールを作成しようとするのは避けましょう。作業見積もりには不確実性が伴い、予測できない課題が発生する可能性もあるため、あまりに細かい計画はかえって無駄になることがあります。
適切なバランスを目指し、依存関係を効果的に管理できるだけの計画の詳細度を確保しつつ、柔軟性を失わないようにすることが大切です。このアプローチにより、プロジェクトの流れがスムーズで適応性のあるものとなり、チームが依存関係を適切に処理できるようになります。
アジャイルにおける見積もりは、チームが直面するさまざまな課題に取り組むための多くの利点を提供します。その主な価値は、作業の範囲や重要性についてチーム内で共有理解を築くことにあります。見積もりは、厳密な締め切りを設定することではなく、現実的な計画を立て、チームの努力を最適化するためのツールです。
チームに見積もりを導入する際には、その価値と目的を十分に説明し、単なる義務ではなく、役立つツールとして受け入れられるようにしましょう。このアプローチにより、見積もりがアジャイルプロセスの中で有用なツールとして機能することを確実にし、チーム全体の効率と成果を向上させることができます。
Comments